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高まるクリティカルマテリアルへの依存 ~ EU重要原材料法案

作成者: Nemko|Aug 7, 2023

 

より良い生活水準を求める80億の人々が暮らすこの世界では、炭素の使用を抑制するために、早急に抜本的な変化を起こさなければなりません。

そのためには、産業革命以来、つまり過去200年から300年の間、飛躍的な技術発展の原動力となった鉱石以外の鉱物の利用を増やす必要があります。

 

クリーンエネルギーへの移行が求められる中、重要な鉱物の利用可能性は大きな課題となっています。

太陽光発電(PV)プラント、風力発電所、電気自動車(EV)などのクリーンエネルギー技術は、一般的に化石燃料ベースのシステムよりもはるかに多くの鉱物を必要とします。

一般的な電気自動車は従来の自動車の6倍の鉱物資源を必要とし、陸上風力発電所はガス火力発電所の9倍の鉱物資源を必要としています。

 

2010年以降、新しい発電設備に必要な鉱物の平均量は50%増加しています。

リチウム、ニッケル、コバルト、マンガン、グラファイトは、バッテリーの性能、寿命、エネルギー密度に、レアアース(希土類元素)は、風力タービンやEVモーターに不可欠な永久磁石に欠かせません。

また電力網は大量の銅とアルミニウムを必要とし、銅はすべての電気技術の基礎となっています。

クリーンエネルギーへのシフトは、これらの鉱物に対する大きな需要を意味するのです。

 

EVとバッテリー・ストレージは、すでにリチウムの最大ユーザーとなり、2040年までにニッケルの最大エンドユーザーになると予想されています。

最新のEVには通常60~80kgの銅が使われており、電力網の拡大により、新しい送電線にも多くの銅が必要になります。

 

 

エネルギー移行のためのミネラル生産の多くは、かなり地理的に集中しています。

リチウム、コバルト、レアアースの場合、世界の生産量の4分の3以上を世界の上位3カ国が占めており、コンゴ(DRC)と中国(PRC)だけで、コバルトとレアアースの世界生産の約70%を占めています。

精製における中国のシェアは、ニッケルが約35%、リチウムとコバルトが50~70%、レアアースが90%近くとなり、中国企業はオーストラリア、チリ、コンゴ、インドネシアの海外資産にも多額の投資を行っています。

複雑なサプライ・チェーンと相まって、主要生産国における物理的混乱、貿易制限、などリスクが高まっていると言えます。

 

これらを輸入に大きく依存するEUは、グリーンでデジタルな未来のために、安全で持続可能なサプライチェーンを確保するためCritical Raw Materials Act - 重要原材料法案を発表しました。

 

本規制は、EUの混乱リスクの低減、ならびに監視機能を向上させ、循環性とサステナビリティを強化する目的とし、2030年までに供給を多様化させるため、以下の通り域内のベンチマークを設定しています。

EUの年間消費量に占める割合で、生産能力の明確なベンチマークを設定:

- 欧州内需要の10%の域内採掘

- 40%の域内加工

- 15%の域内リサイクル

- 第三国依存度を最大65%とする

 

また、EUと米国の間で重要素材協定の交渉も進められています。